動物介護士が解説|老犬が寝てばかりいるのは病気?注意点や気をつけてあげたいこと
愛犬が老犬になり、寝てばかりいるようになったことで、寂しさと同時に「こんなに寝てばかりいるのは何か病気なのかな?」と気になっている飼い主さんも多いでしょう。
老犬になると、些細なことでも心配になりますよね。
そこで今回は、老犬の睡眠時間や寝てばかりいるときの注意点を解説します。
老犬がより快適に過ごせるように気をつけてあげたいポイントもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
老犬が寝てばかりいるのは病気が原因?睡眠時間が長くなるのは自然なこと
犬のシニア期は、小型犬・中型犬で7歳頃〜、大型犬で5歳頃〜とされていますが、老化のスピードは個体差があり、7歳だからすぐに老犬というわけではありません。
しかし、寝てばかりいるようになったのなら、老犬の仲間入りをしたと思ってもいいでしょう。
ただし、病気が原因で寝てばかりの場合もあるため、しっかり見極めてあげることが大切です。
最初に、老犬の睡眠時間や病気が疑われる症状などについて見ていきましょう。
老犬の睡眠時間
犬によって睡眠時間に違いはありますが、平均睡眠時間は以下のようになります。
■ 犬の平均睡眠時間 |
老犬になると、体力の低下や活動量の低下、刺激への反応が鈍くなる、疲れから回復するのに時間がかかるなど、若いころに比べて寝ている時間が増えるのは自然なことです。
また、犬は何度も眠ったり起きたりを繰り返す「多発性睡眠」を行う生きもので、アメリカの研究では24時間のうち、覚醒(起きている)状態が44%、ウトウトしている状態が21%、深い睡眠(徐波睡眠)が23%、浅い睡眠(レム睡眠)が12%という結果になりました。(※1)
この結果から、犬はウトウトしているか浅い睡眠のほうが多いことがわかります。
また、別の研究でも、犬はノンレム睡眠よりもレム睡眠(浅い睡眠)が圧倒的に多く、レム睡眠の時間を十分に取るために睡眠時間を多く必要とすると考えられています。(※2)
このように、犬は睡眠時間を多く必要とする生きものであり、そこに老化が加わることでより長い睡眠時間が必要となり、老犬は寝てばかりいるようになるのです。
老犬が夜に寝ないと心配な飼い主さんは、以下の記事をご覧ください。
動物介護士が解説|老犬が夜寝ないけど大丈夫?原因と対処法 |
※1参考:Physiology & Behavior「Baseline sleep-wake patterns in the pointer dog」
※2参考:AMERICAN KENNEL CLUB「Why Do Dogs Sleep So Much?」
寝てばかりのときに病気が疑われる症状
老犬が寝てばかりいることは自然なことで、元気や食欲、普段の様子に変わったところがなければ、深く心配する必要はありません。
しかし、寝てばかりいる以外に以下のような症状が見られる場合は、病気の可能性もあるため、動物病院を受診することをおすすめします。
✅ 元気がない
✅ 食欲がない
✅ 体重が減った
✅ 大きないびきをかいている
✅ 脱毛している
✅ 皮膚に炎症がある
✅ 寝相がいつもと違う
✅ 震えがある
老犬では、関節炎や椎間板ヘルニアなどで痛みを感じて動きたがらず、寝てばかりいることもあります。
また、ストレスでも睡眠時間が増えることがありますが、重篤な病気が隠れている可能性もあるため、自己判断せずに獣医師にご相談ください。
■ 老犬が寝てばかりいるときに考えられる病気 |
徘徊・夜鳴きが見られる場合は認知症の疑いも
老犬が寝てばかりいるだけではなく、夜間の徘徊や夜鳴きが見られる場合は、認知症の疑いもあります。
犬の認知症は一般的に10歳頃から発症すると考えられており、海外の研究では11~12歳の老犬の28%、15~16歳の老犬の68%に認知症の症状が現れたという報告(※3)がありました。
また、年齢が1歳増えるごとに認知症になる確率が52%増加するという報告(※4)もあるため、徘徊や夜鳴きといった症状が見られる場合は獣医師に相談することをおすすめします。
もちろん、10歳未満でも認知症を発症する可能性はあるので、「10歳になっていないから認知症ではない」と思い込むことはないようにしましょう。
老犬の夜鳴きが心配な飼い主さんは、以下の記事も参考にしてください。
動物介護士が解説|老犬の夜鳴きに薬は効く?使用するリスクや対処法 |
※3参考:National Library of Medicine「Prevalence of behavioral changes associated with age-related cognitive impairment in dogs」
※4参考:scientific reports「Evaluation of cognitive function in the Dog Aging Project: associations with baseline canine characteristics」
老犬が寝てばかりいるときの注意点5つ
老犬になると睡眠時間が増えて寝てばかりになることは自然なことですが、寝てばかりいることで体に不調を抱えることもあります。
以下のようなことに注意してあげることが大切です。
■ 寝てばかりいる老犬の注意点 |
ここで詳しく見ていきましょう。
① 食欲を刺激して体重を維持する
老犬は寝てばかりいることでお腹が減らずに食欲が低下したり、嗅覚の衰えから食欲不振となることがあります。
老犬に必要な量の食事を取らなければ、体力の低下はもちろん、筋力の低下や免疫力の低下、内臓機能の低下、体重減少など、さまざまな弊害が出てきます。
適正体重よりも痩せすぎてしまった場合は、病気になりやすいだけでなく病気になっても回復する体力がないため、病気を長引かせて重症化させてしまうなどのリスクがあるため、体重を維持できるように食欲を刺激して食べてもらう工夫をしましょう。
■ 老犬に食べてもらう方法 |
② 適度な運動や食事で肥満を防ぐ
寝てばかりいることで食欲が低下する老犬がいる一方で、食欲に変化がない老犬もおり、その場合は肥満にならないように気をつけてあげましょう。
老犬は代謝が落ちて太りやすくなりますが、寝てばかりいると活動量が減るので、さらに太りやすくなります。
肥満は足腰や呼吸器に負担がかかるだけでなく、さまざまな病気のリスクが高くなるのはもちろん、全身麻酔のリスクも格段に高くなるため、適度な運動や適切な食事量で肥満を防ぐことが大切です。
すでに太り気味や太りすぎの場合では、獣医師とダイエット計画を立てて適正体重に戻すようにしましょう。
急激なダイエットは老犬の体に負担をかけてしまうため、時間をかけてゆっくり行うようにしてくださいね。
③ 関節がこわばらないようにケアする
老犬が寝てばかりいるとどうしても関節がこわばりやすくなり、体を動かしにくくなります。
体を動かしにくくなることでますます動きたくなくなり、さらに関節がこわばるということが起きやすくなるため、適度に足の曲げ伸ばしを行ったり、関節を温めてあげる、定期的に動物病院を受診するなどして、ケアを行いましょう。
④マッサージなどで血行不良を防ぐ
老犬は、基礎代謝や筋肉量の低下でただでさえ血行不良を起こしやすいですが、寝てばかりいることで血行が悪くなり、さらに体が冷えやすくなります。
体の冷えは下痢や軟便を引き起こすだけでなく、消化不良や食欲不振、免疫力の低下、持病の悪化などにつながるため、血行不良にならないように配慮してあげることが大切です。
血行不良を防ぐためには、ブラッシングやマッサージ、適度な運動などの方法がありますが、最近ではペット用の湯たんぽやヒーターなども販売されているので、愛犬の状態に合わせて使用するといいでしょう。
また、マッサージを行う際には、以下のことに注意してください。
■ 老犬にマッサージをするときの注意点 |
⑤ 寝返りや低反発マットで床ずれを防ぐ
床ずれは、血行不良や栄養失調、長時間体の一部が圧迫されるなどが原因で起こりますが、寝てばかりいる老犬は床ずれを起こす可能性が高くなります。
自分で寝返りをうてたり、動き回ることができる老犬ではそこまで心配する必要はありませんが、高齢犬や体の麻痺などで寝たきり状態になってしまった老犬では注意が必要です。
■ 寝てばかりいる老犬の床ずれ対策 |
犬の床ずれ対策として、一番有効と考えられているのは低反発マットの利用です。(※5)
床ずれができやすいのは骨が突き出ている部分なので、皮膚が赤くなっていないかなど、よく観察するようにしましょう。
床ずれができてしまうと、どんどん進行し、進行に伴って痛みも増して、老犬のQOLが著しく低下します。
また、床ずれで傷ができてしまったところに細菌などが入り込むことで敗血症を起こすこともあるため、床ずれになってしまったらなるべく早く動物病院を受診しましょう。
※5参考:JSAP「Comparison of the different supports used in veterinary medicine for pressure sore prevention」
寝てばかりの老犬に気をつけてあげることは?お世話のポイント6つ
老犬になると睡眠時間が増えて寝てばかりになりますが、体の不調が原因でない場合は、そっと見守ってあげましょう。
また、老犬はどうしても体全体の機能が衰えるため、病気にもかかりやすくなります。
愛犬に穏やかな老後を過ごしてもらうためにも、以下のポイントをぜひ実践してみてください。
■ 寝てばかりいる老犬のお世話のポイント6つ |
ここでは、詳しく解説していきます。
① 快適な寝床を用意する
老犬にとって、快適な寝床を用意してあげましょう。
騒がしくない場所や直射日光にあたらない場所など、場所の配慮はもちろん、室温や湿度にも気をつけてあげることが大切です。
■ 老犬の快適な温度の目安 |
また、寝てばかりいることで体の一部が圧迫され、血行不良や床ずれを起こしやすくなるため、低反発マットを用意してあげましょう。
低反発マットは体圧分散性に優れているので、床ずれを起こしにくくしてくれます。
② 飼い主さんのそばで寝かせてあげる
老犬になるにつれて不安が強くなるため、安心させてあげるためにも飼い主さんのそばで寝かせてあげるようにしましょう。
寝室を分けている場合では、同じ部屋に寝床を用意してあげるなど、少しの工夫で不安やストレスを軽減することができます。
また、不安を感じやすくなると夜鳴きなどにもつながるため、夜鳴き対策にもおすすめです。
夜鳴きの種類や対処法については、以下の記事を参考にしてみてください。
夜泣き=認知症?|老犬の夜泣きの種類と対処法 |
③ いつでも水分が補給できるようにしておく
老犬は喉の渇きを感じにくくなる傾向にありますが、寝てばかりいることでさらに水分を摂らず、老犬自身も気が付かずに脱水状態になってしまうことがあります。
いつでも水が飲めるように、寝床のそばに水が飲める場所を用意してあげましょう。
また、自分からあまり水を飲まない老犬では、犬用ミルクやお肉の茹で汁、果物、ウェットフードなどで水分補給をサポートしてあげることをおすすめします。
■ 犬の飲水量目安 |
脱水を起こしてしまうと、体のさまざまな機能に異常を起こしたり病気の原因となるので、飲水量にも注意してあげましょう。
逆に、飲水量が多い場合(体重1kgあたり90mⅼ以上)は病気の可能性が高いため、動物病院を受診することをおすすめします。
④ 日中のお散歩や日光浴をさせてあげる
老犬にとってお散歩は、気分転換になるのはもちろん、脳に良い刺激を与えてくれたり筋力の維持など、重要な役割があります。
また、適度に太陽の光を浴びることでセロトニンの分泌が促進され、体内時計の調整や精神の安定、睡眠リズムの調整などを行ってくれます。
ほかにも、太陽の光は体内のビタミンDの生成を促し、免疫力を高めるなどの作用が期待できるため、日中に15〜30分程度のお散歩をさせてあげましょう。
歩くことが難しい場合では、ベランダや窓辺での日光浴や、ペットカートなどを利用したお散歩など、愛犬に無理のない範囲で行ってあげてくださいね。
⑤ サプリメントで効率よく栄養を補ってあげる
老犬になると、体のさまざまな機能が衰え、ドッグフードだけでは補いきれない栄養素もたくさん出てきます。
また、老化とともに体内で作られている栄養素や成分の生産量が減ってしまうため、サプリメントで効率よく栄養を補ってあげることが健康維持にも繋がります。
■ 老犬が積極的に摂取したい成分 |
近年はさまざまなサプリメントが販売されていますが、成分含有量が少なく効果が期待できないものも多くあるため、動物病院で販売されている製品を選ぶと安心です。
グネチンC・バングレンを含む脳・老化ケア 犬用サプリメント「トライザ」
また、これまでに脳ケアサプリメントを使用しても期待する効果が見られなかった場合は、新しいアプローチとして注目されているグネチンCやバングレンなどの成分を含むサプリメントをおすすめします。
⑥ 定期的に動物病院で健康診断をする
老犬が寝てばかりいることは自然なことですが、だからと言ってそのままでは病気にかかっていても発見が遅れてしまうことになります。
特に気になることがなくても、老犬では半年に1回は動物病院を受診して、健康診断を受けましょう。
まとめ
老犬になると、寝ている時間が増えるのは自然なことで、寝てばかりいる以外に普段の様子に変化がなければ、深く心配する必要はありません。
しかし、老犬はさまざまな病気にかかりやすくなるため、定期的な健康診断だけでなく、少しでもいつもと様子が違うときなどは動物病院を受診することをおすすめします。
また、睡眠時間が増えた老犬では、注意してあげることやお世話のポイントなども若い頃とは異なります。
快適に、そして穏やかに過ごしてもらうためにも、さまざまな面で愛犬をサポートしてあげましょう。
老化や脳ケア、シニア犬のからだ全体の健康維持に役立つ動物病院専用サプリメント「トライザ」の1週間分(7粒)の無料サンプルは ↓ から
執筆者:高田(動物介護士)