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動物介護士が解説|老犬の夜鳴きに薬は効く?使用するリスクや対処法

老犬の夜鳴きに悩む飼い主さんは多いです。

愛犬が夜中に鳴き続けると、近所迷惑の心配や、飼い主さん自身の寝不足、家族間の不和など、精神的にも追い込まれてしまいますね。

長生きしてくれた愛犬に感謝し、できるだけ穏やかに接してあげたいと思っても、いつまでも鳴き続けられてついつらくあたってしまったり、ノイローゼになってしまうこともあるでしょう。

愛犬の夜鳴きを止めたいけど、夜鳴きの薬はあるのか、効果はあるのか、使っても副作用は大丈夫なのか、ほかに方法はないのかなど、考え出すとキリがありません。

そこで今回は、老犬の夜鳴きに薬を使用する効果やリスク、対処法について解説します。
老犬の夜鳴きの原因についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
 

老犬の夜鳴きの原因は?認知症だけではないので注意

そもそも老犬の夜鳴きにはさまざまな原因が考えられ、やみくもに薬で夜鳴きを抑えれば良いというものではありません。

まず最初に、愛犬の夜鳴きの原因が何なのか、もう一度考えてみましょう。

 

①不安や要求による夜鳴き

老犬になると、視覚や聴覚の衰えはもちろん、思ったように体が動かせないなど、若い頃とは違う感覚に襲われます。

そのため、もどかしさで鳴いたり、不安で誰かにそばにきてほしい・そばにいてほしいと要求して夜鳴きになることがあります。

実際に私も経験しましたが、寝たきりになってしまった愛犬の夜鳴きがひどく、認知症かと思いましたが、思ったように動けないという不安や体の向きを変えてほしい、そばにいてほしいという要求から夜鳴きをしていたことがありました。
老犬になると若い頃よりも不安を感じやすくなるということもあるため、不安からの夜鳴きではないかよく観察してみましょう。

 

②体の不調や病気による夜鳴き

老犬が夜鳴きをするのは、どこかが痛いなどの不調を抱えているのかもしれません。


10歳以上では、40%以上の老犬に背骨や関節の異常が見つかるという報告もあり、慢性痛を抱えている老犬は多いと考えられます。
痛みによって夜鳴きをする老犬もおり、痛みはストレスとなるだけでなく、隠れている病気に気づかずにいることで病気を悪化させてしまうことにもなるため、老犬が夜鳴きをするときは一度動物病院を受診することをおすすめします。

 

③環境や寝床の不快感による夜鳴き

老犬は体温調整が苦手になるため、暑い・寒いといったことを夜鳴きで訴えていたり、ふしぶしの痛みから寝床が薄い・床が硬いといった不快感を夜鳴きで訴えることがあります。

室温や湿度は快適に保たれているか、体に負担がかからない寝床になっているか、もう一度確認してみましょう。

 

④空腹や喉の渇きによる夜鳴き

老犬が夜鳴きをする原因として、お腹が空いていたり喉が乾いていることも考えられます。

老犬は消化機能が衰えるため、一度にたくさん食べられなくて残したり、食べる体勢がきつくて途中でご飯を食べることをやめてしまうことがありますが、お腹を空かせた状態なので鳴いてご飯を要求します。

また、室温や湿度の影響や体調不良などで喉が渇いているのに、自分で水を飲みに行けないことから夜鳴きで訴えているのかもしれません。

食事の回数を増やしたり食器台を利用する、水分補給をこまめに行うなど、愛犬の状態に合わせて配慮してあげましょう。

 

⑤排泄に関する夜鳴き

老犬が夜鳴きをするのは、排泄に関するものが原因ということもあります。

お腹が痛い、ちゃんと出きっていなくて気持ち悪い、ガスが溜まって不快感がある、排泄後の不快、便秘など、排泄ひとつを見てもさまざまなことが考えられます。

老犬になると体のさまざまな機能が低下し、排泄トラブルを抱えたり、力が入りにくくて排泄がうまくできないなどといったことも起きるため、愛犬をよく観察してみましょう。

 

⑥認知症による夜鳴き

なぜ認知症で夜鳴きをするのかはわかっていませんが、夜鳴きの原因が認知症ということも十分に考えられます。

ただ、夜鳴きの原因はこれまで挙げたようにさまざまあり、認知症であるかどうかは飼い主さんが判断することはできません。

老犬が夜鳴きをするときは何らかの原因があるため、一度獣医師にご相談ください。

 

老犬の夜鳴きに薬は効く?原因や個体によって異なる

老犬の夜鳴きの原因や体質によっては、薬によって夜鳴きを抑えることができますが、必ずしも薬が効果的とは言い切れないのが現状です。

特に認知症が原因であった場合には内服薬が適さないケースもあるため、安易に使用することはおすすめできません。

認知症の夜鳴きに対する薬は、寝てもらうための薬であり、薬に対する耐性がついてしまえば効かなくなるということもあります。

ここでは、もう少し詳しく夜鳴きに対する薬の効果やリスクについて見ていきましょう。

 

痛みなどによる夜鳴きには効果が高い

痛みなどによる夜鳴きであれば、原因となる疾患や痛みに対して適切な薬を投薬することで、痛みが解消したり和らぎ、夜鳴きがなくなることもあります。

この場合では、痛みをとってあげることで老犬のストレス軽減やQOLの向上ができるため、薬を使用することは老犬のためにも良いことです。

 

認知症による夜鳴きの薬とそのリスク

夜鳴きを止める薬というものは存在しませんが、対処療法として寝てもらうことで夜鳴きを抑えるという方法がとられることもあります。

老犬の症状や年齢、持病、服用している薬などを総合的に判断して、その犬に合わせた薬が処方されます。
サプリメントであれば副作用の心配はほぼありませんが、薬は副作用があり、嘔吐や下痢、震え、食欲不振、元気がなくなるといったことがみられることもあるでしょう。

また、薬の副作用以外にも、心臓や腎臓への負担、認知症の進行などに影響を与えることがあるため、どんなリスクがあるのかをきちんと把握し、慎重に扱う必要があります。

処方された薬の副作用や影響については、かかりつけの獣医師にしっかりご確認ください。

 

老犬の夜鳴きに薬を使用する注意点3つ

老犬の夜鳴きによって体力の消耗が心配される場合や、飼い主さんの精神的・体力的負担が大きい場合に薬が処方されることがありますが、使用するときは注意しなければいけないこともあります。

詳しく解説するので、しっかり覚えておいてくださいね。

 

①自己判断で与えない

老犬の夜鳴きで薬を処方されるときは、薬のリスクを考えても飲ませたほうが良いと獣医師が判断したときです。

夜鳴きなど認知症が原因で処方される薬は安易に使用すべきものではないため、自己判断で薬を購入して愛犬に与えることはおすすめできません。

薬を飲ませたい場合は、必ず動物病院を受診しましょう。

薬を販売する通販サイトなどを利用したいと考えることもあるかもしれませんが、獣医師に相談せずに購入するのは成分や用量などのわずかな違いが重大な副作用を起こすこともあり、危険なので控えたほうが良いでしょう。

 

②獣医師の指示を必ず守る

老犬の夜鳴きに薬を処方される場合は、効果が弱く最少の用量からスタートするのが一般的です。

特に夜鳴きなど認知症対策で処方される薬は、過剰摂取が命の危険となる薬も多いため、必ず獣医師の指示を守って使用するようにしてください。

実際、愛犬(体重4kg)は神経遮断薬のひとつであるアセプロマジンを1回4分の1錠で処方されましたが、心臓に負担がかかるのでできる限り使用しないようにと言われていました。

使用するタイミングも細かく指示されるため、きちんと守って正しく使用しましょう。

 

③少しでも異変が出たら服用を注意して獣医師に相談する

薬は体質に合う合わないがあり、老犬によっては副作用が出やすくなることもあります。
少しでも異変が見られた場合は服用を中止し、獣医師にご相談ください。

その際、

・薬を飲ませた時間
・薬が効きはじめた時間
・効果があった時間
・どのような体調の変化があったか

などを細かく伝えることが重要です。

そのためにも、処方された薬がどのような副作用があり、効きはじめる時間や効果が持続する時間などを事前に確認しておくことをおすすめします。

 

老犬の夜鳴きに薬以外の対処法は?

前提として、老犬の夜鳴きは何らかの原因が必ずあるため、かかりつけの獣医師に相談してください。

そのうえで認知症と診断され薬を処方された場合は、薬だけに頼るのではなく、以下の4つの対処法も実践してみましょう。


老犬の夜鳴きに薬を使用しても、体への負担はもちろん、耐性がついてしまえばまったく効果がない場合があったり、認知症を進行させてますます夜鳴きを悪化させるということもあり、できる限り薬を使用しないように目指すことをおすすめします。

 

①叱らず穏やかに接する

老犬の夜鳴きにノイローゼとなってしまう飼い主さんもいるように、精神的に余裕がなくなりがちですが、絶対に叱らないようにしてください。

叱られることでかまってもらえたと学習し、ますます夜鳴きを助長させてしまうことにもつながります。

また、老犬によっては信頼する気持ちが失われてしまうことも。

犬には人に同調・共感する能力があり、一緒に暮らす期間が長いほど同期化するという研究結果もある※ため、イライラした気持ちが伝わって夜鳴きをさせてしまうことも考えられるので、穏やかに接することを心がけましょう。

※参考:麻布大学「イヌはヒトに共感する能力を有している ヒトの情動変化に応じたイヌの情動変化が観察された」

 

②日光浴をさせる

夜鳴きをする老犬は、体内時計が狂って昼夜逆転していることも考えられるため、1日15分〜30分程度の日光浴をさせてあげましょう。

太陽の光を浴びることで脳内の神経伝達物質の1つであるセロトニンの分泌が促進され、精神の安定や体内時計の調整などを行います。

セロトニンは、夜になると睡眠を誘導するホルモンに変化するため、しっかりセロトニンを増やしてあげておくといいでしょう。

また、昼間に寝ている時間を少なくするように、お散歩に出たり一緒に遊ぶ、知育トイを用意するなど、起きている時間を増やす工夫をしてください。

 

③サプリメントで脳に必要な栄養を補う

夜鳴きをする老犬には、脳に必要な栄養が補える脳ケアサプリメントを取り入れてみましょう。

認知症は脳細胞が破壊されることで起こりますが、脳に必要な栄養が行き届いてなかったり、体内の活性酸素が増えて細胞を傷つけたり死滅させるということがそもそもの要因のひとつなので、活性酸素から体を守る成分を補ってあげるのがおすすめです。

また脳の神経細胞の健康を維持するうえで、近年注目を浴びているのが神経栄養因子という物質です。
神経栄養因子は脳の神経幹細胞に働きかけ、神経細胞の新生(分化)を促進し、神経細胞の成長や維持に深く関与すると考えられています。

注目の成分「バングレン」は、神経栄養因子のような働きをすることがさまざまな試験で分かっています。


脳ケアサプリメントはさまざまなものが販売されているので、愛犬の体質に合ったサプリメントを見つけることができれば、健康的な認知機能へ導き、夜鳴きなどの悩みを解消したり和らげることができるでしょう。

今までの老犬用サプリメントの多くはDHAやポリフェノール系の成分が多く、使用しても期待する効果がみられなかった場合には、新しいアプローチとして注目されているグネチンCやバングレンなどの成分を含むサプリメントをおすすめします。
また、動物病院で販売されている製品だと安心して愛犬に与えることができます。

食事から取り入れられる栄養素には限りがありますし、老犬になると食が細くなる子もいると思います。
不足しがちな成分はサプリメントで効率的に取り入れられると良いですね。

 

④施設を活用する

現在は、老犬ホームが一時的に老犬を預るショートステイがあったり、動物病院の預かりサービスなど、老犬の介護をサポートしてくれる施設も増えています。

飼い主さん自身がリフレッシュし、いつも穏やかでいるためにも、たまには施設を利用することも検討しましょう。

 

まとめ

老犬の夜鳴きは、痛みを抑えたり体力を消耗させないために薬が必要になることもありますが、まずはなぜ夜鳴きをしているのかの原因を探ることが大切です。

そしておひとりで悩まず、獣医師や動物看護師、動物介護士などの専門家に相談しましょう。

薬やサプリメント、普段からできる日光浴などさまざまな対処法がありますが、一番大切なことは飼い主さんが心穏やかに接することです。

それだけで老犬の夜鳴きが和らぐということもあるので、無理をせず相談できる環境をつくってくださいね。

夜鳴きが少しでも軽減され、老犬と飼い主さんが穏やかな日々を過ごせますように。

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執筆者:高田(動物介護士)